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冷酷御曹司に独占される偽りの令嬢 の小説カバー

冷酷御曹司に独占される偽りの令嬢

瀬川清美は、偽の令嬢という濡れ衣を着せられ、一夜にして名門の地位から田舎の貧農の娘へと突き落とされた。偽令嬢の悪意ある罠、婚約者からの侮蔑、そして養父母による追放。周囲は彼女が没落し、田舎で一生を終えるのを嘲笑っていた。しかし、彼女の正体は中京市の名門一族に連なる真の令嬢だった。さらに彼女は、天才ハッカー、宝飾デザイナー、人気作家、そして神の手を持つ医師という多重の顔を隠し持っていたのだ。かつての養父母が恩を盾に資産を奪おうとすれば、その醜悪な本性を白日の下に晒し、復縁を迫る元婚約者は冷酷に一蹴して街から追放する。立ちはだかる敵を次々と沈め、圧倒的な力で逆転劇を演じる彼女。そんな彼女を「田舎者に嫁ぎ先などない」と嘲笑う者が現れる中、中京を支配する冷徹な御曹司が彼女の腰を抱き寄せ、熱い視線で囁いた。「どこへも嫁ぐ必要はない。俺が君の元へ婿入りする」と。最強の仮面を纏う令嬢と、彼女を独占せんとする大物御曹司。二人の運命が、華麗なる報復と共に動き出す。
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章 2

思い返せば二十数年前、佐喜子が出産した病院で火災が起きた。混乱のなか、看護師たちは必死に赤ん坊を保育器から抱き出したが、人波にまぎれるうちに取り違えが起こり、いくつかの家庭の子どもが入れ替わってしまった。

佐喜子は清美をそのまま抱き帰り、逆に心葉は工場勤めの夫婦のもとへと渡ってしまった。

ようやく実の娘を取り戻した瀬川家は、心葉を宝物のように扱った。

とりわけ佐喜子は、長年外で苦労させられてきた心葉を心から気の毒に思い、その不幸のすべてを清美のせいにしてしまった。

かたや清美は――偽りの令嬢としての役目を終えた途端、あっさりと家を追い出される始末だった。

噂によれば、彼女の実の両親は、新容市で一番貧しい霧渓里に住む農家の人だそうだ。

心葉はあどけない顔を装って清美を見つめた。「お姉ちゃん、田舎に帰りたくないんでしょ?でも仕方ないよね。人は自分に得な方に流れるものだから。だって瀬川家は新容市でも有名な豪門で、お姉ちゃんはここで贅沢三昧に育った。でも実の両親は、満足に食べられない貧しい農家。比べてみれば、差は歴然だよね」

清美の胸には、未練のかけらもなかった。冷静な瞳の奥には、瀬川家の会社をここまで押し上げた自分の手腕への揺るがない自信が宿っていた。

「ふん……」

軽く鼻で笑い、清美は背を向けて階段を上った。衣服を数着と、自分の物だけをいくつかまとめる。

階下へ戻ると、心葉の指先にあった豆粒ほどの傷は、すでに包帯で覆われていた。

この調子なら、もう少し遅ければ自然に治っていたかもしれない。

「お姉ちゃん」 心葉は得意げな顔で、わざとらしく言った。「来月、私と浩司お兄ちゃんの婚約披露宴があるの。お姉ちゃんは田舎に帰ったけど、来てくれると嬉しいな」

雲野浩司は清美の幼なじみで、子どもの頃からずっと一緒に育ち、将来を約束した相手だった。 だが心葉が瀬川家に戻ってきてからというもの、彼の態度は一変。あの日まで清美に向けられていた優しさは影を潜め、代わりに心葉へと向けられるようになった。

その掌を返すような振る舞いに、清美の心はすっかり冷めていた。そんな男を、もはや一瞥する価値すらないと悟っていた。

心葉はかすかに声を潜め、わざとらしく言った。「でもね、浩司とお姉ちゃんは一緒に育ったのに、結婚するのは私なんだもの。お姉ちゃん、ちょっとは悔しいんじゃない?」

背を向けたまま、その言葉に清美は吐き気を覚えた。

くるりと振り返り、冷ややかな眼差しで心葉を見据える。「この時代、ゴミでも奪い合う人がいるなんてね。欲しいなら持っていけばいい。私はゴミを集める趣味なんてないから。わざわざ訪ねて回収してくれるなら、こっちは分別の手間が省けて助かるわ」

「……あんたっ!」心葉は歯を食いしばり、怒りで顔を歪めた。でも、ふと思いつき、佐喜子に向かって声をあげた。「お母さん!お姉ちゃん、こんなこと言ってるけど……やっぱり浩司お兄ちゃんとまだ一緒になりたいんでしょ?」