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捨て妻、伝説の弁護士となる の小説カバー

捨て妻、伝説の弁護士となる

無敗の弁護士「ネメシス」としての輝かしい経歴を封印し、私は三年間、東京地検のエース検事・神宮寺圭を支える献身的な妻として生きてきた。しかし、結婚記念日の夜に彼が口にしたのは、かつての恋人の名前だった。決定的な決別はレストランで訪れる。ウェイターが熱湯をこぼした瞬間、圭は私を顧みず、元カノのほのかを身を挺して守った。重傷を負い、水ぶくれに苦しむ私に彼が投げつけたのは、一枚のカードと冷淡な言葉だけ。その冷酷な仕打ちに、愛を捧げた妻としての私は死んだ。三ヶ月後、私はかつての伝説的な弁護士として再び法廷に立つ。対峙するのは、自身のキャリアを懸けた重要事件を担当する検事の圭だ。物静かな主婦が裏の世界で恐れられる「ネメシス」本人だとは、彼は知る由もない。私は法曹界の頂点から、愛を裏切り、私を捨てた男の完璧な無敗記録を完膚なきまでに叩き潰すことを誓う。これは、すべてを失った女が、自らの知性と実力で過去を清算し、誇りを取り戻すための復讐劇である。
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章 2

翌朝、家は墓場のように静まり返っていた。圭は彼女が起きる前に家を出ており、ベッドの彼の側は冷たく、乱れていなかった。彼の高価なコロンの香りが微かに空中に漂っていた。そこに住んではいるが、決して真に存在しない男の亡霊。

恵はスーツケース一つに荷物を詰めた。結婚前に自分のものであったものだけを取った。彼女の本、自分で買った数着のシンプルな服、そして、保留にしていた人生が詰まった箱。それ以外のもの――圭が彼女のサイズも好みも聞かずに買ったブランド服、箱の中で手つかずのままの宝飾品、彼のお気に入りの食事を完璧に作るために使ったキッチン用品――はすべて置いてきた。それらは、彼女がもはや演じることのない劇の小道具だった。

スーツケースのジッパーを閉めていると、ドアベルが鳴った。そのチャイムは静かな家の中で耳障りだった。誰も来る予定はなかった。

ドアを開けると、そこに立っていたのは雑誌の表紙から抜け出してきたような女性だった。背が高く、すらりとしていて、恵の月々の食費よりも高価そうな、シャープな白いパンツスーツを着ていた。ブロンドの髪は完璧にスタイリングされ、その笑顔は明るく、計算され尽くしていて、真の温かみはなかった。紹介されなくても、恵は彼女が誰だか分かった。

西園寺ほのか。

「こんにちは」ほのかは絹のように滑らかな声で言った。「あなたが恵さんね。私はほのか」

彼女は手を差し出さなかった。ただ恵の向こう、家の中を見つめた。

「圭はいる?私のブランドの法務レビューの最終確認で、朝食を一緒にする約束だったんだけど」

恵が答える前に、圭の声が廊下から響いた。「ほのか!早いじゃないか」

彼は恵の横を通り過ぎ、ここ数年彼女に向けられたことのない、本物の笑顔で顔を輝かせた。彼はほのかを温かく抱きしめた。そのさりげない親密さは、長く深い歴史を物語っていた。

「ちょうど近くにいたから」ほのかは身を引いたが、手は彼の腕に置いたままだった。「この知的財産権の問題が少し心配で。新しいラインのローンチが今週だから、どんな些細な問題も避けたいの」

「心配するな」圭の声は低く、安心させるような響きだった。「俺が全部片付ける。関連する判例はもう洗い出してある。奴らが何にやられたのか気づく前に、黙らせてやるさ」

彼はほのかをリビングに導いた。玄関に立つ恵の存在を完全に忘れて。二人はソファに座り、ほのかがブランドバッグから取り出したタブレットを覗き込み、頭を寄せ合った。彼は完全に没頭し、その集中力は絶対的だった。不可能な裁判に勝つために彼が使うのと同じ集中力。妻である彼女に、一度として向けられたことのない集中力。

恵は二人を見ていた。彼らは完璧にお似合いだった。東京のパワーカップル。彼は天才検事。彼女はセレブデザイナー。彼らは揃いのセットだった。

恵は何も感じなかった。嫉妬も、怒りも。ただ、深く、冷たいほどの明晰さだけがあった。自分はここでは部外者だ。代役だ。その役がすでに決まっていたことに気づかず、愚かにもオーディションを受けただけの存在。

彼女は静かに玄関のドアを閉め、自分の部屋に戻った。スーツケースを手に取った。

リビングを通り過ぎる時、ほのかの笑い声が聞こえた。「まあ、圭ったら、私がコーヒーに砂糖一つとアーモンドミルクを少し入れることまで覚えててくれたのね。あなたはいつも私のことを一番よく知っていたわ」

「忘れられないこともあるさ」圭は優しく答えた。

恵はドアノブに手をかけたまま、立ち止まった。彼女は三年間、毎朝彼のコーヒーを淹れてきた。ブラック、砂糖二つ。彼が命懸けでも思い出せないであろう、単純な事実。

彼女は音もなく家を出た。振り返らなかった。空港までタクシーを拾った。東京の太陽が、肌に厳しく、異質なものに感じられた。

飛行機の中で、広大な東京の街が眼下に小さくなっていく中、恵はノートパソコンを開いた。堂島はすでに、彼女が復帰後最初に担当する案件のファイルを送ってきていた。残忍で、ハイリスクな敵対的買収。クライアントは破産の危機に瀕し、相手方の弁護士は悪名高い冷酷な事務所だった。誰もが、勝てない裁判だと言っていた。

恵は予備的な準備書面を読み進め、彼女の心は元の場所にはまり込んでいった。挑戦のスリル、弱点を探す狩り、心の中で展開される戦略。それは、三年間息を止めていた後に、再び呼吸をするような感覚だった。

花を生け、夫の帰りを待っていた女は、もういなかった。

ネメシスは、すでに仕事に取り掛かっていた。