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エリュフィシア・ヒストリオ の小説カバー

エリュフィシア・ヒストリオ

異世界エリュフィシアは、本来その地には存在しないはずの異端なる技術「アルコーン」の台頭により、果てなき戦乱の渦へと飲み込まれていった。加速し続ける争いの歴史の中で、小国ウェルギス王国もまた存亡の危機に立たされている。この動乱の時代を背景に、次期国王としての宿命を背負う青年アラステアは、自ら剣を手に取り最前線へと赴く決意を固めた。戦場に吹き荒れるのは、敗者の慟哭、強者の憤怒、そして己の信念を懸けて戦う者たちの誇り。混沌がすべてを支配する過酷な戦場において、彼は何を信じ、何を守り抜くのか。凄惨な戦いの中で、揺るぎない覚悟を胸に秘めた者だけが生き残ることを許される。国家の命運と個人の誇りが複雑に絡み合う中、アラステアは自らの正義を貫くために、終わりなき戦いへとその身を投じていく。これは、異質な技術がもたらした動乱の歴史に抗い、激動の時代を駆け抜ける王子の足跡を描いた壮大なファンタジー戦記である。彼が歩む道の先には、果たしてどのような結末が待ち受けているのだろうか。
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3

 ヴァルナスは、最後の砦として待機していた王室騎士団を集めた。

「お待ちを!我々も出撃するのですか…?」

 副長であるイゼル・ヘリューズが疑問を呈す。当然の疑問である。たしかに敵は城に侵入する寸前だ。しかし王室騎士団は文字通り、王室を守る騎士団。城を離れるわけにはいかない。

「陛下の御意思だ。奮戦する友軍を助けよ、と」

「それに、アラステア殿下が出陣なされた。我らがふんぞり返るわけには、いくまい?」

「アラステア様が!?」

 騎士たちは大いに驚く。しかしすぐに冷静になり、早急に出撃準備を整えた。1秒でも早く、戦場に行かなければならないからだ。次期国王に『万が一』など、決して許されないのだから。

 一騎当千である彼らが行けば、戦況は一変する。だが一方で、城内部の防備が薄くなるのも、事実だ。彼ら以外にも城防衛部隊がいるが、敵軍の戦力からして、本格的に城の侵略が始まれば、彼らだけで対処するのは無謀すぎる。

「待て!ヘリューズ副長。君と君の麾下は残れ」

「しかし、殿下を!」

 ヘリューズは体をせり出したが、ヴァルナスはそれを制した。

「落ち着け、イゼル。国王直属近衛隊と共に防衛しろ」

 へリューズの顔が強張る。

「まさか、戻らないおつもりではないでしょうね…?」

 その問いにヴァルナスは答えることは無かった。そして自身の部隊の騎士たちに、少し寄る所があると告げ、部隊を先に前線へ向かわせた。

 ヴァルナスはある男の部屋へと歩を進める。城の北側にあるその部屋へと、急ぐ。その道中も、何度か戦闘のものと思われる揺れが彼を襲った。しかし彼はそれに怯まず、大理石で出来た巨大階段を昇っていく。

 その男は、窓から外を見つめている。視線の先には、死力尽くす同胞たち。そして同胞たちを叩き潰そうとする、無数の侵略者。

「何をしている、ヴァルナス」

 男の窓を見つめる顔は、険しい。ヴァルナスは男の背中が怒っているように感じた。

「…ジャーダイン。頼みがある」

 ジャーダインは、振り向いた視線の先のヴァルナスを睨みつける。ヴァルナスも退くわけにはいかず、睨み返す。ジャーダインの部下たちは、両人の成り行きを静観するしかなかった。

「ヴァルナス。貴公、まさか行く気ではないだろうな…?」

「そうだ。アラステア様の命だ。おそらくは、民兵と訓練生も、前線に駆り出させる。だから、我々と共に――─」

 ジャーダインは、剣を床に突き付けるように、打ち付けた。音は部屋に反響し、誰の言葉も許さなかった。そして部屋にいる者たちは、ジャーダインから殺気にも似た威圧感を、その身に打ち込まれた。

「我ら国防騎士団の使命は、王都と城を護ること。王都陥落の今、我らが動くわけにはいかん!!」

 ジャーダインは怒りに満ち溢れている。

「…アラステア様がご出陣なされた。あの方は、城に一歩も入れない覚悟だ。ジャーダイン、頼む。城と陛下はイゼルたちが――─」

「それでもならん!!こちらにも覚悟がある!!」

「…ホード、東側の部隊に命令だ。もうすぐ東側が突破される」

 ジャーダインは再び、窓の方を見る。ヴァルナスは、眉間の皺を寄せた。そして何も言わず、部屋を後にした。扉を閉めるときの音だけを残して。

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