
絡繰人形
長年にわたり、執拗に繰り返される悪夢に精神を削られてきた青年。彼はその忌まわしい夢の連鎖を根本から断ち切るため、かつて少年時代を過ごした思い出の団地へと再び足を踏み入れる。期間限定の再入居という形で、過去の記憶が眠る場所へ戻った彼を待ち受けていたのは、平穏な再会ではなく、逃れられない恐怖の幕開けだった。かつて自分が住んでいた部屋には、その場所から離れることができず、ただひたすらに縛られ続ける不気味な霊が漂っていた。さらに、青年の命を執拗に狙う、得体の知れない小柄なピエロが闇から姿を現す。団地という閉鎖的な空間の中で、過去の因縁と現在の怪異が複雑に絡み合い、青年は絶体絶命の窮地に立たされる。霊が部屋に留まり続ける理由とは何なのか、そしてピエロが彼を殺そうとする目的は何なのか。悪夢の根源に隠された真実を暴き、生き残るための孤独な戦いが今始まる。現実と幻想が交錯する団地を舞台に、逃げ場のない恐怖が青年を飲み込んでいく。
章
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章 1
俺のかつて生まれ育った団地だけど、そんな懐かしい雰囲気なんて浸れない。
二十棟もあった集合住宅で、当時はとても活気があった。今ではまさしく廃墟の塊と言っていい。なぜここに、またいるのか。
俺は少年時代、ずっと悪夢に悩まされていた。血が滲んだ包帯を全身に巻いた人のような何かが、十年近くも夢に現れていた。どんな状況下だろうが、不意に現れては必ず俺に襲い掛かっていた。しかもすぐには俺を仕留めにかからない。必ず全身を俺に見せてから、じわじわと迫ってくる。当時臆病だった俺はこれにかなり泣かされていた。幸いだったのは、やはり夢にしか出てこなかった事だろうか。
そんな夢は団地から引っ越してから急に見なくなり、次第にそんな事は忘れていった。
しかし、二十歳を過ぎてから少しながら、確実にまた現れ始めた。以前程、ヤツに対して怖いとは思っていなかったが、同時に悪意を感じ始めていた。何故なのか知りたくなってきた。
こうして団地を管理していた住宅公社に無理を言い、昔住んでいた部屋に再度、期間限定で入居した。団地を出てから夢を見なくなったから、ここに何かあるのかも知れない。
だがそんな知りたかった事が、あんな大事になるとは思っても見なかった。