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玉座についたヒーロー の小説カバー

玉座についたヒーロー

遺伝子研究の分野で比類なき才能を発揮し、若くして業界の頂点に君臨していたバイ・ロッキー。しかし、学会へ向かう途中の航空機事故が彼の運命を暗転させる。死の淵を越えた彼が目覚めたのは、未知なる異世界だった。第二の生を得たロッキーは、窮地に陥っていた一頭のドラゴンを救い出し、神龍帝国を舞台に過酷な修行の日々に身を投じていく。驚くべきことに、彼が絆を結んだドラゴンには、あらゆる病を癒やし、死者にさえ命を吹き込むという伝説的な力が秘められていた。かつての科学者は、この地で無力な人間であることをやめ、野心に満ちた武術の達人、そして精霊を操るスピリット・マニピュレーターとしての道を歩み始める。比類なき相棒となったドラゴンと共に、ロッキーは新たな世界の理を切り拓き、壮大な冒険の旅へと踏み出す。己の野望を胸に、かつての知識と新たな力を融合させた彼が、異世界の歴史にその名を刻んでいく物語がいま幕を開ける。彼らが辿る波乱に満ちた軌跡と、その先に待ち受ける真実をその目で見届けよ。
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章 1

目を覚ましたロッキー・バイは汗だくで、その目は困惑を隠せなかった。 悪夢から目覚めた直後のように感じ、 息を切らして、すぐに何かがおかしいことに気づいた。 そして体を起こすと、 目に入った光景に圧倒された。

彼は古典的な装飾の豪華で素晴らしい部屋にいた。 ランプもライトもなかったが、昼のように明るかった。 横たわっていた快適なベッドは金色の絹のキルトと白いチュールで囲まれていて、 おそらく皇帝のベッドもこのようなものではないかと感じた。 白いチュールの向こうのキャビネットには金と翡翠のオブジェがたくさん並んでいて、 どれもかなり高価な品であることが見て取れた。

視界に入るものすべてにロッキーは驚いたが、ふと「僕はどこにいるんだ?」という疑問に襲われた。 彼の最後の記憶は、会議に行く途中だったということだった。 国際動物ゲノムセンターから基調講演をするために招待されていたのだ。 遺伝子研究の分野で若く才能溢れる学者であるロッキーは、仲間の中でもナンバーワンに注目されていて、 彼を超える学者はいなかった。 飛行機でその会場に向かっていたが、航空機事故が発生したので彼が気を失ったのだ。 そして今、彼は不思議な部屋にいた。

地獄でないことは確かだった。 天国だったとしたら、周りの全てをこんなにリアルに感じられなかっただろう。 誰かが死んだら、魂だけが天国へ行くことができると言われているが、 魂は物理的に何も感じることはできないはずだから、 彼の感覚はまさしくリアルそのものだったのだ。 ベッドの柔らかさと心地よさだけでなく、隣のキルトの下には人の温もりも感じた。

突然、ロッキーは隣に人が横たわっているのに気づいて驚いた。 その人を起こさないよう慎重にキルトを上げると、 そこにはエレガントな女性がいた。 彼女はロッキーの腕の中に横たわっていた。 彼からは彼女の顔の半分しか見えなかったが、 その女性が16歳くらいの少女であることは判別できた。

ロッキーはしばらく彼女をみていた。 白いナイトローブを着て、頭、手首、足に金色の装飾品を身に着けていたことから、 良家の子女と思われた。

ロッキーはソワソワしながらつばを飲み込み、 本当に天国にいるのではないかと思った。 そうでなければ、こんな美女が腕の中で眠ってくれるなんてありえないからだ。 天国で他にどれだけいいことがあるのだろうと思うと、彼の唇に笑みがこぼれてきた。

すると、ロッキーの頭に汚い考えが浮かぶと、 突然、眠っている少女はかすかにうなされ、体の向きを変えた。 彼女の顔はロッキーの肩を離れ反対側を向いた。 ロッキーは彼女の顔を見て凍りついた。 彼女の顔は神が作った傑作とも言える美しさだ!

顔はすっぴんだったが、磁器製の人形のように繊細で、 まつげは、長くカールし、息がかかると揺れた。 そして鼻は信じられないほどかわいい形をしていて、バラのつぼみのような唇はキャンディーのように甘そうに見え、ロッキーは味わってみたくなった。 彼女はまだ若いとはいえ、成熟した女性のような魅惑的な雰囲気を醸し出していた。 彼女が成長した暁には何千人もの男が彼女の虜になるだろうとロッキーは確信した。

「ロッキー、やめろ! その子を見つめちゃいけない! まだ若い少女なんだぞ! その子をどうしようって言うんだ?」 ロッキーはそう自分に言いながら、首を振り、すぐに彼女から目をそらした。 心臓の鼓動は高まり、顔は赤く紅潮した。 幸いなことに、彼の年齢はすでに30を超えていたため、 隣に彼女のような美女がいても、自分自身の衝動をコントロールすることができたのだ。 「彼女は僕から見れば幼い少女に過ぎない」と自分に言い聞かせて落ち着こうとし、そして罪悪感が彼の胸に溢れた。

「でも僕は今どこにいるんだ?」 ロッキーは周りを見回しながらつぶやいた。 論理的には、自分は航空機事故で亡くなったはずだが、今は無事で問題ない状態だった。

ロッキーが自分の考えに夢中になっていると、隣の少女が突然目を覚ました。 彼女は丸い目をゆっくりと開けると、 ロッキーは彼女を見て唖然とした。 その魅力的な目に輝く魔力を否定することは世界中の誰もできないほどの美しさだった。

「やあ! 目を覚ましたね! 僕がどこにいるのか教えて欲しんだ。 そして、なぜ僕たちは一緒にここに横たわっているの? 僕たちは... ? 僕たちは... ?」 ロッキーはぎこちなく言葉を詰まらせた。 少女が目覚めるのを見るやいなや、彼は無意識に微笑んだ。

少女はロッキーの声を聞くと動きを止め、 不安げな表情になった。 象牙のような手を伸ばし、ロッキーの熱を確認しようと彼の額に手を置き尋ねた。「バジル、大丈夫? 熱で頭が変になった? 何を言ってるの? 池からハンカチを拾わなくてもいいと私は言ったのに、あなたは私の言うことを無視して拾うと言い張ったのよ。 今の自分をよく見て! 司祭長は、『神様でもこの熱病から彼を救うことはできない。 そして、遅かれ早かれ死ぬことになる』とおっしゃったのに。 神様ありがとう、 あなたは今目覚めたのよ!」

少女の言葉はロッキーをさらに困惑させた。 彼女が言ったバジルとは誰だろう? 僕だろうか? 彼女は僕をよく知っているようだったが、僕は間違い無く彼女には一度も会ったことがなかったのに。

「もう一度司祭長に診てもらう方がいいから、呼んでこようかしら」と少女は言い、ベッドから降りた。 そして服や髪を直しもせずに急いでドアに駆け寄った。

「ねえ! ねえ!」 ロッキーが彼女を呼び止めようとしたが、彼女はすでに部屋を出ていた。

ロッキーもベッドから出て 部屋を見回すと、古代の宮殿の個室にいるように感じた。

突然、ロッキーは自分の体に違和感を感じた。 まるで空中を歩いているようだった。 腕を上げると、たくましかった腕が小枝のように細くなっていて、 おまけに身長も変化していることもわかった。 背が低くなったように感じたのだ。

鏡がベッドの右側にぶら下がっているのに気づくと、自分の感覚を確認すべくその鏡に向かった。 彼が近づくにつれて、か弱く、骨っぽい姿が、ダイヤモンドがはめ込まれた楕円形の鏡に徐々に現れはじめた。 鏡に映った顔は若いが青白く、まるで死人のようで、 体も突風に吹き飛ばされそうな若木のように痩せていた。

「何てことだ! 一体誰なんだ! ?」 ロッキーは鏡に映った自分を見て叫んだ。