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彼の見捨てられしオメガ、アルファ王の破滅 の小説カバー

彼の見捨てられしオメガ、アルファ王の破滅

最強のアルファと謳われる黒崎達臣の「運命の番」として、私は十五年もの歳月を彼に捧げてきた。荒ぶる彼の獣を鎮める唯一の「錨」であると信じて疑わなかった完璧な世界は、ある日、精神感応を通じて伝わってきた裏切りの予感によって脆くも崩れ去る。私の誕生日、パックの緊急事態だと嘘をついて向かった先で、彼はアシスタントの沙美と密会していた。見つけた隠しスマホには私を嘲笑うメッセージが並び、彼が贈った宝飾品を手に悦に浸る愛人の姿があった。この許しがたい不貞は毒となり、私の魂は彼を拒絶し始める。ヒーラーが下した診断は、絆の汚染による魂の拒絶反応だった。さらに沙美から届いた妊娠検査薬の画像が、私に決別を決意させる。彼の血筋さえも奪われた今、私は自ら「錨」の鎖を断ち切ることを選んだ。弁護士へ連絡し、慰謝料すら拒否して望むのは、彼という呪縛からの完全な解放のみ。これは単なる逃走ではない。裏切り者の世界を根底から崩壊させるため、静かに、そして確実に実行される緻密な撤退劇だ。私が火を放つ導火線の先で、王の破滅が幕を開ける。
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章 2

恵里菜の視点

翌朝、黒崎がベッドの向こうから手を伸ばし、私の腰に触れようとした。私は思わず身をすくめてしまった。それはほとんど気づかれないほどの小さな動きだったが、彼の内なる狼はそれに気づいた。混乱と不快感の低い唸り声が彼の胸で響き、それは音として聞くよりも肌で感じた。

『どうした、愛しい人?』彼の声が精神感応(マインドリンク)を通して心に響いた。

私は彼に背を向けたまま答えた。『悪い夢を見ただけ』

彼はそれ以上追及しなかった。代わりに、私の首筋に鼻をこすりつけ、その声は滑らかで説得力のあるものに変わった。「今夜、サプライズがあるんだ。崖の上のレストランに行こう。僕たちが初めて会った、あの場所に」。彼はそう言って、二人の間の空気に思い出を漂わせた。「特別な夜にしたいんだ」

冷たい笑みが私の唇に浮かんだ。「素敵ね」私は虚ろな声で言った。「私からも、あなたにサプライズがあるの」。溶かされたムーンストーンの塊は、すでにハンドバッグの中の小さな無地の箱に収められていた。

私の心は先週へと飛んだ。私の誕生日。黒崎は忘れていた。彼は、北の境界線近くで起きたはぐれ狼の襲撃事件という、緊急の一家の用事が入ったと主張した。彼は一晩中、家を空けていた。今ならわかる。彼がどの「はぐれ狼」を「処理」していたのか。

苦々しさが、口の中に物理的な味として広がった。

その夜、彼の流線型の黒いスポーツカーでレストランに向かう途中、助手席のフロアマットに何かが落ちているのが目に入った。一本の、長い、ブリーチされた金髪。沙美のものだ。

私は何も言わなかった。

レストランは海を見下ろす崖の上にあり、波が下の岩に打ち寄せていた。美しく、ロマンチックで、かつて彼が私に世界を約束した場所。それを終わらせるには、ふさわしい場所のように思えた。

前菜の途中で、黒崎は眉をひそめた。「くそっ」彼はこめかみを叩きながら呟いた。「精神感応(マインドリンク)のネットワークの調子がまた悪い。第四象限のサーバーファームがどうとか…。ガンマに電話してくる。すぐ戻るよ」

もちろん、嘘だった。サーバーファームなんて存在しない。「精神感応(マインドリンク)のネットワーク」は、彼が一家の仕事、そして今では浮気のために使う便利な口実だった。

彼がいなくなった瞬間、私は動いた。ヒールを鳴らしながら車へと戻る。彼が私が知らないと思っている予備のスマホは、グローブボックスの中だ。パスワードは知っている。沙美の誕生日。

画面が点灯し、露骨なメッセージのやり取りが現れた。

沙美:『今、あの女と一緒?言ってた通り、退屈?』

黒崎:『死ぬほどな。すぐにお前のところへ行く。あの赤いドレスを着てろ。俺が好きなやつだ』

私が見ていると、新しいメッセージがポップアップした。沙美からの写真だった。彼女は鏡の前でポーズをとり、象徴的な小さな青い箱を掲げていた。ティファニーの箱。キャプションにはこう書かれていた。『今夜、これを着けてもらうのが待ちきれないわ、アルファ』

胃がひっくり返った。物理的な嫌悪感が非常に強く、吐き気がした。それは単なる嫉妬ではなかった。私の魂、私の狼そのものが、私たちの神聖な絆の冒涜を拒絶していた。

黒崎がテーブルに戻ってきたとき、彼の顔は穏やかな魅力の仮面をかぶっていた。「全部片付いたよ」彼は微笑んで言った。

私は彼を見た。本当の意味で彼を見て、見知らぬ他人を見た。吐き気が喉の奥から、熱く、酸っぱくこみ上げてきた。

「大丈夫か?」彼は心配そうな表情で尋ねた。「顔色が悪いぞ」

「ホタテにあたったみたい」私は椅子を引いて嘘をついた。「気分が悪いわ」

私は化粧室に駆け込み、真っ白な便器に胃の中身をぶちまけた。彼の裏切りという毒に、私の体は痙攣していた。