家族のiPadに秘められた秘密 の小説カバー

家族のiPadに秘められた秘密

9.1 / 10.0
『家族のiPadに秘められた秘密』は、共有端末に届いた不審なメッセージから始まる衝撃のmodernミステリーです。結婚20年の夫の不倫、そしてそれを嘲笑う息子の裏切りを知った主人公は、完璧だった家庭が虚飾であったと悟ります。匿名掲示板で出会った協力者の助言を受け、彼女は復讐のために証拠集めを開始します。家族という仮面を剥ぎ取り、すべてを奪い返すための緻密な計画が動き出すアクション要素を含んだ物語。ネットで人気のmystery storyやfiction booksを探している読者に最適な、愛憎渦巻く復讐劇が今幕を開けます。
「家族のiPadに秘められた秘密」のあらすじ
家族で共有するiPadに届いた一通の不適切なメッセージ。それが、私の平穏な日常が崩壊する合図だった。当初は高校生の息子がトラブルに遭ったのだと信じていたが、匿名掲示板の住人たちは残酷な真実を突きつける。その連絡の宛先は息子ではなく、二十年間連れ添った夫・彰人だったのだ。さらに衝撃的だったのは、息子が夫の不倫を知るだけでなく、それを助長していた事実だ。息子が憧れていたスクールカウンセラーと夫の密会を、二人は陰で笑い合っていた。「母さんは退屈だ」と吐き捨て、私の代わりとなる女性との再婚を望む息子の言葉に、私の心は深く傷つき、絶望の淵に立たされる。完璧だと信じていた家族は虚飾に満ち、私はただの道化に過ぎなかった。しかし、掲示板で弁護士を名乗る人物から届いた「すべてを燃やし尽くせ」という助言が、私の魂に復讐の火を灯す。裏切り者たちに報いを受けさせるため、私は冷徹な決意を胸に、反撃の第一歩を踏み出した。震える指を抑え、私は未知の協力者へ救いを求めるメッセージを打ち込む。「方法を教えて」と。
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家族のiPadに秘められた秘密 第1章

家族で共有しているiPadに表示された、いかがわしいLINEメッセージ。それが、私の完璧な人生に最初の亀裂を入れた。

最初は、高校生の息子がトラブルに巻き込まれたのだと思った。でも、匿名掲示板のユーザーたちが、身の毛もよだつような真実を指摘した。メッセージは息子宛てじゃない。結婚して20年になる夫、彰人(あきと)宛てだったのだと。

裏切りは、二人の会話を盗み聞きしたことで、共謀へと変わった。息子が「イケてる」と褒めていた学校のスクールカウンセラーと、夫が不倫していることを笑い合っていたのだ。

「だってさ、母さんって…マジで退屈じゃん」と息子は言った。「もう別れて、あの人と一緒になればいいのに」

息子はただ知っていただけじゃない。私の代わりになる女を応援していたのだ。私の完璧な家族は嘘だった。そして私は、その笑い者だった。

その時、掲示板で弁護士を名乗る人物から届いたメッセージが、焼け野原になった私の心に火を灯した。「証拠を集めろ。そして、奴の世界を灰になるまで燃やし尽くせ」

私は震えることのない指で、返信を打ち込んだ。

「方法を教えて」

第1章

藤崎(ふじさき) 亜希子(あきこ) POV:

私の完璧な、世田谷の穏やかな日常が、緻密に構築された嘘だったと気づく最初のきっかけは、口紅の跡でも、知らない香水の匂いでもなかった。家族で共有しているiPadに、無邪気に光る一件のLINEメッセージだった。

夕食の後片付けを終えたばかりで、まだレモンの洗剤の匂いがツンと鼻をつく。有名な建築家である夫の彰人は、大阪へ出張中。高校二年生の息子、蓮(れん)は、二階の自室で大学受験の勉強をしているはずだった。家は静まり返り、食洗機の低い唸りだけが響いていた。

朝のジョギングのために天気予報をチェックしようと、キッチンカウンターに置いてあったiPadを手に取った。しかし、画面にはすでに通知バナーが表示されていた。そのメッセージのプレビューを見た瞬間、肺の中の空気が氷に変わった。

知らない番号からだった。「昨日の夜はヤバかったね。あのホテルの部屋のこと、ずっと考えちゃう。次はあなたの番だよ…近いうちにね」。その後に続くのは、ウインクする顔、水しぶき、そしてナスの絵文字。

心臓が肋骨に激しく打ち付けられる。まるで檻に閉じ込められた鳥のように、狂ったように暴れていた。

最初に浮かんだのは、母親としての本能。蓮のことだった。私の可愛い、時に不機嫌になるけれど、根はいい子。あの子が…誰かと?それも年上の?その考えは、頭から冷たいヘドロをぶちまけられたような衝撃だった。ホテルの部屋という言葉が、あまりに大人びていて、あまりに汚らわしい。

私はカウンターのスツールに崩れ落ちた。急に足の力が抜けてしまった。蓮はいい子だ。でも、16歳だ。16歳の男の子は、ホルモンに突き動かされて馬鹿な間違いを犯す。頭の中では、息子がバイトしている書店にいる、捕食者のような年上の女の姿が駆け巡っていた。

誰かに相談したかった。でも、友人には話せない。恥ずかしすぎて、とてもじゃないが無理だ。まるで自分の失敗をさらけ出すようなものだったから。だから私は、21世紀の絶望した人間が誰でもするように、匿名掲示板に助けを求めた。

時々、思春期の子供との接し方についてアドバイスを求めて覗いていた、非公開の育児掲示板を見つけた。使い捨てのアカウントで、震える指で状況を打ち明けた。詳細はぼかした。

「共有のタブレットで、いかがわしいメッセージを見つけました。高校生の息子(16歳)が、年上の誰かと不適切な関係にあるようです。メッセージには『ホテルの部屋』という言葉がありました。どう対処すればいいのかわからず、怖くてたまりません。何かアドバイスをいただけないでしょうか?」

すぐに返信がつき始めた。ほとんどが同情的なものだった。息子を問い詰めずに話を聞き出す方法など、育児掲示板らしい、ありきたりなアドバイスばかり。

その中で、一つのコメントが私の胃の腑に石のように沈んだ。

User4815162342:「待って。それ、本当に息子さんだと確信してる?」

私は画面を瞬きした。どういう意味?もちろん、息子に決まっている。他に誰がいるというの?

私はカッとなって、反論を打ち込んだ。「はい。他に誰がいるんですか?」

SuburbanGothMomと名乗る別のユーザーが割って入った。「もう一度メッセージをよく読んでみて。言葉遣いを。『次はあなたの番だよ』って。これ、10代の言葉遣いに聞こえる?それとも、もっと主導権を握ることに慣れた大人の言い方に聞こえない?」

部屋が急に冷え込んだ気がした。私は自分の投稿までスクロールして戻り、打ち込んだ言葉を読み返した。「次はあなたの番だよ…」

Redditor_JaneDoe:「それに、ホテルの部屋。ほとんどのホテルはチェックインにクレジットカードと20歳以上の身分証明書が必要よ。書店のバイト代で、16歳の子が情事のためにホテルの部屋なんて取れるかしら?」

息が詰まった。無理だ。絶対に無理。蓮のデビットカードは、私が設定した一日五千円の上限がある。彼はいつもそのことで文句を言っていた。映画館でジュースを買うのさえ、いちいちお説教されるのに、ホテルの部屋なんて夢のまた夢だ。

私の心は否定の霧に包まれていた。馬鹿げている。インターネット上の見ず知らずの他人が、勝手な妄想を膨らませているだけだ。

しかし、疑いの種は蒔かれてしまった。それは小さく、毒のある種だったが、すでに芽吹き始めていた。コメントは次々と寄せられ、冷たく厳しい論理の滝が、私が丹念に築き上げてきた現実を少しずつ削り取っていく。

「主さん、家に他に男性はいないの?」

その質問が、画面上で非難がましく、卑猥にぶら下がっていた。私の指はキーボードの上を彷徨った。

彰人。

私の、彰人。毎朝ベッドにコーヒーを持ってきてくれる人。雑誌で理想の夫、理想の父親として称賛され、息子のサッカーの試合にも時間を割く、先見の明のある建築家。私が20年間愛してきた人。

その考えはあまりに馬鹿げていて、思わず笑いそうになった。乾いた、空虚な笑いが。

しかし、掲示板のスレッドは、もはや私のものではなくなっていた。コメント主たちは探偵のように、私が存在すら知らなかったパズルのピースを組み立てていた。

そして、私の足元から床が抜け落ちるような、決定的なコメントが投稿された。

LegalEagle88:「主さん、ナスの絵文字はどう?あれはただの暗示じゃない。特定の…男性向けの精力増強剤、特にあの青い小さな錠剤と一緒に使われることが多いんだ。16歳の少年には全く必要ない。でも、40代の男が若い相手についていこうと必死になっているなら…」

画面が滲んだ。血の気が引き、指先から始まった冷たいものが、ぬるぬると体全体に広がっていく。シルデナフィル。バイアグラ。青い小さな錠剤。ナスの絵文字。

ありえない。

彰人。

視界が晴れ、恐ろしいほど新たな鮮明さで画面に焦点が合った。馬鹿げた考えは、どろりとした、息の詰まるような恐怖へと変わった。胃が激しくかき混ぜられる。カウンターの縁を掴んでいなければ、うずくまってしまうほどの強烈な吐き気に襲われた。

彼は大阪にいる、と私は自分に言い聞かせた。学会に出ているんだ。

玄関のドアが開く音に、私は飛び上がった。ドアの横の小物入れで鍵がガチャリと鳴る。

「亜希子?ただいま!サプライズだよ!」

彰人の声が、暖かく、聞き慣れた響きで玄関ホールにこだました。一日早く帰ってきたのだ。

彼はキッチンに入ってくると、そのハンサムな顔をくしゃっとさせて、カリスマ的な笑顔を見せた。まだ出張用の服のままだ。仕立ての良いジャケットに、高価なジーンズ。成功した男が、完璧な我が家に戻ってきた、完璧な絵姿。

「仕事が早く終わったから、大好きな二人に会いたくてたまらなくなっちゃってね」彼はそう言ってブリーフケースを床に置き、私を抱きしめた。高級なコロンと、飛行機の微かに無機質な匂いがした。彼は私の頭のてっぺんにキスをした。「会いたかったよ」

彼は身を離すと、私の顔を見て笑顔を曇らせた。「おい、大丈夫か?幽霊でも見たような顔してるぞ」

彼はシカゴの有名なチョコレート店の、上品な小さな箱を掲げて見せた。「君のお気に入りの、ダークチョコレートキャラメルを買ってきたよ」

彼の瞳は心配に満ちていた。幾千もの食卓で私を見つめてきた、あの暖かな茶色い瞳。私の夫の瞳。私の子供の父親の瞳。

嘘つき。

私はかろうじて弱々しく微笑んだ。顔がこわばって、まるで他人のもののようだった。「ちょっと…疲れてるだけ。色々あって」

彼はチョコレートをカウンターに置き、後ろから私を抱きしめ、私の肩に顎を乗せた。いつもは安らぎを与えてくれる彼の感触が、今は檻のように感じられた。「可哀想に。上に行って熱いお風呂にでも入ったらどうだ?下のことは全部やっておくから。後で背中もマッサージしてやるよ」彼は私をよく知っていた。何を言えばいいか、完璧にわかっていた。

私はもうしばらく、最後の、絶望的なテストとして、彼に抱かれていた。彼の胸に頭をもたせかけると、彼の心臓の鼓動が、私の背中に規則正しく、偽りのドラムを刻んでいた。

「ううん、大丈夫」私は囁き、粉々になる前に彼から離れた。「おかえりなさい」

彼は私の肩をぎゅっと握った。その演技は完璧だった。「いいから、行けよ。俺は蓮に挨拶してくるから」

彼が二階へ向かうと、私はカウンターのそばに彼が置きっぱなしにしていたブリーフケースに歩み寄った。手が震えていた。この疑いを抱いていることへの罪悪感と羞恥心が胸を刺した。これは彰人だ。私の、彰人だ。

以前、空港からの帰り道で、私のスマホの充電が切れた時、彼は自分のスマホを差し出してくれた。「俺のを使えよ、ハニー。好きなだけ見ていいから」彼に隠すことなど何もなかった。彼のスマホは、仕事のメールと母親からのメッセージで埋め尽くされた、開かれた本だった。

私は無理やり自分を止めた。私はおかしくなっている。匿名のネットの荒らしに狂わされているんだ。

私は彼の荷物を片付けることにした。普通の妻の仕事。普通に戻るための方法。私は彼のスーツケースをランドリールームに運んだ。メインの収納部分のジッパーを開け、彼のシャツやスーツを取り出すと、彼のコロンの慣れた香りが小さな空間に満ちた。

そして、前のポケットのジッパーを開けた。

私の手が、小さくて四角い何かに触れた。アルミの小袋。

私はそれを引き抜いた。

私の世界が、止まった。

それはコンドームの包みだった。彼が私とは一度も使ったことのない、馬鹿みたいに高価な高級ブランドのもの。そして、新たな吐き気と共に思い出した。一ヶ月前、蓮の洗濯カゴの底から、同じブランドのコンドームが一つだけ出てきたのを、思春期の好奇心だと片付けてしまったことを。

膝から崩れ落ちた。私は床にへたり込み、アルミの包みが手のひらに冷たく感じられた。部屋がぐるぐる回る。肺から全ての空気が吸い出されたようだった。掲示板のコメントが頭の中で響き渡る。「40代の男が若い相手についていこうと必死になっているなら…」

パズルのピースが、嫌な音を立てて、最後のひとかけらまでカチリとはまった。

蓮じゃなかった。

最初から、蓮じゃなかったんだ。

私の夫だった。

カウンターに置いていた私のスマホが震えた。掲示板からの新しい通知。私は這うようにしてスマホに近づいた。体は制御不能なほど震えていた。

LegalEagle88からのダイレクトメッセージだった。

「ちなみに、私は離婚弁護士だ。もしあなたの直感が夫だと言っているなら、それに従いなさい。そして、もしそうなら、問い詰めてはダメ。証拠を集めるの。そして、奴の世界を灰になるまで燃やし尽くすのよ」

視界が鋭くなった。吐き気は引き、氷のような冷静さが取って代わった。溢れそうだった涙は、涙腺の中で凍りついた。

私は手の中のコンドームの包みを見た。二階で、あの嘘つきで狡猾な父親に迎えられている息子のことを思った。私の人生の20年間、嘘だった20年間を思った。

私はスマホのロックを解除した。指はもう震えていなかった。掲示板のアプリに戻り、弁護士に返信した。

「方法を教えて」

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