愛が灰燼と化すとき の小説カバー

愛が灰燼と化すとき

8.8 / 10.0
『愛が灰燼と化すとき』は、兄の親友でロックスターの桐谷蓮に恋をした沙英が、残酷な裏切りを経て再生を目指す姿を描いたromance作品です。長年の約束を嘲笑われ、暴力と嘘で傷ついた彼女は、自分を犠牲にする生き方を捨ててフィレンツェへと旅立ちます。依存から脱却し自立した人生を掴み取る、young adult世代に響く物語。最新のwebnovelで、執着を断ち切り未来を切り拓くヒロインの軌跡を読み進めてください。
「愛が灰燼と化すとき」のあらすじ
兄の親友であり、圧倒的な輝きを放つロックスター、桐谷蓮。十六歳の頃から彼に憧れ続けてきた沙英は、十八歳の時に彼が口にした「二十二歳になったら身を固める」という言葉を人生の指針にしてきた。しかし、運命だと信じていた二十二歳の誕生日、下北沢のバーで彼女を待っていたのは、無慈悲な裏切りだった。蓮は沙英の純真な想いを嘲笑い、彼女を諦めさせるために別の女性との狂言婚約や妊娠を仕組んでいたのだ。絶望の雨の中を逃げ出した後も、蓮の残酷な仕打ちは止まらない。事故の際に見捨てられた沙英は重傷を負い、さらには病院に現れた彼から「嫉妬に狂った女」と罵倒され、噴水に突き飛ばされて置き去りにされる。かつての愛は暴力と嘘によって踏みにじられ、献身はただの迷惑な執着として処理された。心身ともに深い傷を負った沙英は、彼に関連するすべての縁を断ち切ることを決意する。これは悲劇のヒロインとして終わるための逃避ではない。壊れた約束から自分を解放し、フィレンツェの地で新しい人生を刻むための、力強い再生の物語である。
もっと見る

愛が灰燼と化すとき 第1章

私の世界のすべては、桐谷蓮を中心に回っていた。兄の親友で、人を惹きつけてやまないロックスターの彼に。

十六歳の頃から、私は蓮に憧れていた。そして十八歳の時、彼の何気ない一言に、藁にもすがる思いでしがみついた。「お前が二十二になったら、俺も身を固める気になるかもな」

その冗談みたいな言葉が、私の人生の道しるべになった。すべての選択は、その言葉に導かれた。二十二歳の誕生日こそが、私たちの運命の日だと信じて、すべてを計画した。

でも、下北沢のバーで迎えた、その運命の日。プレゼントを握りしめた私の夢は、木っ端微塵に砕け散った。

蓮の冷たい声が聞こえてきた。「マジかよ、沙英が本当に来るとはな。俺が昔言ったくだらないこと、まだ信じてやがる」

そして、残酷すぎる筋書きが続いた。「怜佳と婚約したってことにする。なんなら、妊娠してるって匂わせてもいい。それでアイツも完全に諦めるだろ」

プレゼントが、私の未来が、感覚を失った指から滑り落ちた。

裏切りに打ちのめされ、私は冷たい東京の雨の中へ逃げ出した。

後日、蓮は怜佳を「婚約者」として紹介した。バンド仲間が私の「健気な片想い」を笑いものにする中、彼は何もしなかった。

アートオブジェが落下した時、彼は怜佳を救い、私を見捨てた。私は重傷を負った。

病院に現れた彼は「後始末」のためだった。そして信じられないことに、私を噴水に突き飛ばし、血を流す私を置き去りにした。「嫉妬に狂ったヤバい女」と罵って。

どうして。かつて私を救ってくれた、愛したはずの人が、こんなにも残酷になれるの?

なぜ私の献身は、嘘と暴力で無慈悲に消し去られるべき迷惑なものになったの?

私はただの邪魔者で、私の忠誠心は憎悪で返されるべきものだったの?

彼の被害者になんて、ならない。

傷つき、裏切られた私は、揺るぎない誓いを立てた。もう、終わり。

彼と、彼につながるすべての人間の番号をブロックし、縁を切った。

これは逃避じゃない。私の、再生。

フィレンツェが待っている。壊れた約束に縛られない、私のための新しい人生が。

第1章

福岡の空気は、いつも音楽の熱気に満ちていた。「MIDNIGHT HOWL」が演奏する夜は、特に。

私は十六歳で、桐谷蓮は二十二歳だった。

彼は兄、健司の親友で、バンドのリードギター。

カリスマがあって、どこか影がある人。

私は彼に、どうしようもなく夢中だった。

ただの憧れじゃない。彼がそばにいるだけで、世界がぐらりと傾くような感覚。

バンドの練習には、いつもクッキーを焼いて持っていった。チョコチップを多めに入れた、蓮が好きなやつ。

初期のライブポスターも描いた。言葉にできない想いを込めて、鉛筆を走らせた。

彼が書いたすべての曲の、すべての歌詞を知っていた。

十八歳の誕生日。

私は高校三年生で、美大の願書も出し終えて、東京での夢に胸を膨らませていた。

でもその夜だけは、福岡のことしか考えられなかった。「Live House B-SIDE」のステージを熱狂させる、「MIDNIGHT HOWL」のことだけ。

ライブの後、健司がバックステージでこっそりシャンパンを一口飲ませてくれた。

背徳と、ほんの少しの勇気の味がした。

その勇気だけで、蓮を探した。汗で濡れた黒髪、ローディーと話しながら浮かべる気だるい笑み。

心臓が激しく脈打った。

「蓮さん」

彼が振り向く。そのクールな視線が、私を捉えた。

「よお、沙英。誕生日おめでとう」

言葉が、堰を切ったように溢れ出した。不器用で、心の底からの叫びだった。「蓮さんのことが、ずっと好きです。何年も前から」

そして、シャンパンと長年の希望に背中を押されて、私は彼にキスをした。

一瞬の、ぎこちないキス。

彼は避けなかったけど、応えてもくれなかった。

顔を真っ赤にして離れると、彼は面白がるような、少し呆れたような表情で私を見ていた。

そして、わしゃわしゃと私の髪をかき混ぜた。その仕草は、優しさと、突き放すような冷たさが同居していた。

「お前はまだガキだな、沙英」

心が沈んだ。

「まあでも」彼は続けた。飲んでいたビールのせいで、少し舌がもつれている。「お前が大学を卒業して、まあ、二十二にでもなったら…もし、まだ俺のことを好きでいてくれるなら…俺もそろそろ、いい子と身を固めたくなるかもな。そん時は、考えてやるよ」

彼は冗談みたいに、軽く言った。

でも私は、その言葉に命綱のようにしがみついた。

二十二歳。それは、約束に聞こえた。

四年。

私はムサビに合格した。グラフィックデザイン科。

東京は私を丸ごと飲み込んだ。授業と課題の嵐、そして福岡への、蓮への、鈍い痛みを伴う郷愁。

彼の「約束」は、私の秘密のタイムリミットになった。

「MIDNIGHT HOWL」のささやかな成功を、遠くから追いかけた。彼らの曲は、深夜に課題と向き合う私のサウンドトラックだった。

二十二歳の誕生日を、私は綿密に計画した。

それはただの誕生日じゃない。締め切りであり、新しい世界への扉だった。

架空のアルバムジャケットまでデザインした。私たちが迎える未来を、形にしたもの。

馬鹿げているとわかっていたけど、それが重要に思えた。彼への、プレゼント。

二十二歳。

その日は、ついにやってきた。

「MIDNIGHT HOWL」は、メジャー契約をかけた業界向けのショーケースライブのために東京に来ていた。

茶色い紙で丁寧に包んだ「アルバムジャケット」を握る手が、震えていた。

彼らはライブ前の打ち合わせを、下北沢の流行りのバーでしていた。

私は早く着きすぎた。期待と緊張で、胸が張り裂けそうだった。

薄暗い店内は、古くなったビールと新しい野心の匂いがした。

奥の半個室のブースに、彼らがいた。蓮、健司、他のバンドメンバー。

そして、知らない女が一人。蓮にぴったりと寄り添っている、気の強そうな女。

邪魔をしたくなくて、私はためらった。

その時、蓮の低い、不満そうな声が聞こえた。

「マジかよ、沙英が本当に来るとはな。俺が昔言ったくだらないこと、まだ信じてやがる」

全身の血が凍りついた。

ドラマーが口を挟んだ。「おい、あれはちゃんとしとけよ。お前が女子大生を弄んでるなんて思われたら、怜佳さんがキレるぞ」

怜佳。あの女の名前か。

蓮はため息をついた。「わかってる、わかってるよ。だから、計画通りにやる」

彼の声は少し低くなったけど、毒に満ちた一言一句が、私の耳に突き刺さった。

「九条怜佳さん。俺たちの広報担当、っていうか、そうなりたい人。俺たちは彼女に気に入られたいんだ。彼女が、ある芝居を手伝ってくれることになってる。『ヤバいファン』を撃退するっていう芝居をな」

冷たくて、残酷な笑い声。

「沙英には、怜佳と婚約したってことにする。なんなら、妊娠してるって匂わせてもいい。それでアイツも完全に諦めるだろ。それに、もし契約できたら『落ち着いたロックスター』っていうPRにもなるって、怜佳さんも言ってるしな」

健司。私の兄。彼の声は、気まずそうだった。かすかな抗議の声。「蓮、それは酷すぎるだろ」

でも、それ以上は言わなかった。バンドの和を保つためか。それとも、どうでもよかったのか。

世界が、傾いた。憧れじゃなく、吐き気で。

絶望が、物理的な衝撃となって私を襲った。

「アルバムジャケット」、私が丁寧に作り上げた夢が、感覚を失った指から滑り落ちた。

べたつく床に、鈍い音を立てて落ちた。

私は振り返り、バーから逃げ出した。突然降り出した、冷たい東京の雨の中へ。

一粒一粒の雨が、氷の破片のように肌を刺した。

雨で張り付いた髪が視界を遮り、街の灯りが意味のない光の筋となって滲んだ。

馬鹿みたいに、痛みを伴って、記憶が蘇る。

何年か前の、地元の音楽フェス。たぶん十五歳で、バックステージに入れる年じゃなかったけど、健司がこっそり入れてくれた。

「MIDNIGHT HOWL」はまだ駆け出しで、荒削りで、飢えていた。

混沌。怒鳴り合うローディー、散乱する機材。

不安定に置かれていた重い照明機材が、ぐらりと揺れ始めた。

私はその真下にいた。サウンドチェック中のステージ上の蓮に、心を奪われて。

突然、強い力で腕を引かれた。

蓮だった。

彼は低いステージから飛び降りて、その目は驚きで見開かれていた。

私が立っていた場所に、機材が轟音と共に落下した。

「大丈夫か?」彼の声は、荒々しかった。

私は頷くことしかできなかった。心臓が激しく鳴っていた。

彼は私の手のひらに、何かを押し付けた。彼のお守りのギターピック。

「危ない真似すんなよ、ガキ」

それだけだった。私のくだらない憧れが、本物だと、待つ価値のあるものだと思い込んでしまった瞬間。

あのピック。ビロードの小箱に、大切にしまっていた。

今では、その記憶自体が裏切りのように感じられた。

何年も。

クッキーも、ポスターも、彼らのデモテープを聴きながら過ごした夜も。

大学生活も、東京への引越しも、すべてが彼の無責任な「かもな」という一言を、北極星のように追いかけていた。

すべての犠牲、すべての選択が、彼への希望に染まっていた。

「まだ信じてやがる」彼の言葉が、こだまする。

重荷。私は、そういう存在だった。

私の愛は贈り物じゃなかった。迷惑で、残酷な、仕組まれた嘘で処理されるべき問題だった。

新しい道。見つけなければ。彼から、この場所から、遠く離れた道を。

その考えは、痛みの嵐の中で揺れる、小さな蝋燭の灯りだった。

冷たくこわばった指で、スマホを探す。

健司に電話して、叫んで、理解したかった。

でも、何を理解するというの?

健司はそこにいた。蓮の計画を聞いていた。あのブースでの彼の沈黙は、どんな言葉よりも雄弁な肯定だった。

彼は蓮が怜佳に本気だと知っていた。蓮が私の心を壊そうとしているのを知っていて、それを許した。

もしかしたら、蓮に同意していたのかもしれない。私はただの、うっとうしい妹だったのかもしれない。

メッセージの通知音が鳴った。

知らない番号。でも、胃がひっくり返るような気がした。わかっていた。

蓮からだった。

「バーにいたんだってな。もし何か聞こえてたら悪い。怜佳とは本気なんだ。お前も、もう前に進め」

謝罪じゃない。切り捨てだった。

私の丁寧に作り上げた幻想の世界が、粉々に砕け散った。

前に進め。

そうね。

連絡先リストをスクロールして、暗記するほど知っている蓮の番号を見つけた。

ブロック。

次に、健司の番号。

ブロック。

私は小さなアパートに転がり込んだ。濡れた体から滴る水が、使い古された床に染みを作った。

ドレッサーの上の、ビロードの小箱が目に入った。

お守りのギターピック。

手に取ると、冷たくて、異質な感じがした。

嘘の象徴。

突然の、鋭い動きで、私はそれをゴミ箱に投げ捨てた。描きかけのスケッチとコーヒーの出がらしの下に、埋めた。

それが、第一歩だった。

続きを読む

愛が灰燼と化すとき 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

100点満点の離婚計画 の小説カバー
8.7
結婚生活が終わりに向かう様子を、私は三年間「離婚までの100点プラン」と名付けた黒い日記帳に綴ってきた。夫の蓮が、私よりも初恋の女性である愛梨を優先するたびに点数を引いていき、ゼロになった瞬間に別れると決めていたのだ。ついにその時が訪れたのは、私が交通事故で重傷を負った夜だった。お腹には、長年待ち望んだ新しい命が宿って八週目。搬送先の病院で、看護師たちは必死に当直のスター外科医である蓮へ連絡を取る。電話越しに伝えられたのは、RHマイナスの妊婦が大量出血で命の危機に瀕しているという緊急事態。しかし、スピーカーから聞こえてきた彼の声は、あまりにも無情だった。「今は白石さんの対応が最優先だ。そちらには何も回せない」と言い放ち、彼は一方的に通話を切った。元カノへの手厚い処置を確保するためだけに、彼は自分の妻と、まだ見ぬ我が子を見殺しにすることを選んだのだ。絶望の淵で、私たちの婚姻関係は完全に崩壊した。
裏切り夫を捨てた令嬢の華麗なる復讐 の小説カバー
8.1
財閥令嬢の身分を隠し、夫の起業を支え続けた五年間。献身的に尽くしてきた私を待っていたのは、残酷な裏切りだった。結婚式を目前に、二人の共有口座から五千万円もの大金が消えたのだ。送金先は夫が「友人」と称していた女性。不審に思い調べを進めると、そこにはその女性と幼い子供と共に、幸せそうに笑う夫の隠された家族写真があった。問い詰める私に対し、夫は謝罪するどころか安物のネックレスを投げつけ、「金に汚い」と罵声を浴びせる。その瞬間、彼への愛は完全に冷め、私は復讐を決意した。私は実家の母へ連絡を入れ、かつて断った名家との縁談を受け入れることを告げる。彼が頼り切っていた会社の基幹データを全て奪い去り、未練と共に婚約指輪をゴミ箱へ捨てた。冷え切った夜の空気の中、アパートの前には新たな婚約者が差し向けた高級車、マイバッハが静かに停車している。富も地位も、そして彼が依存していた全てを奪い取る、華麗なる報復劇が幕を開ける。
クズ夫に復讐!離婚後、世界一の大富豪と結婚!? の小説カバー
8.4
極秘結婚から三年、曽根明里は待ちに待った結婚式を目前に控えていた。しかしその前夜、長年尽くしてきた夫から放たれたのは、別の女性と結婚するという非情な宣告だった。「彼女は命の恩人なんだ。今度は僕たちが彼女を支える番だろう?」という夫の身勝手な理屈に、明里の愛は完全に冷め切ってしまう。これ以上、日陰の身として耐え忍ぶ必要はない。形だけの偽装離婚のはずが、明里にとっては未練を断ち切る真の決別となった。自由を手にした彼女の前に現れたのは、冷酷非道と恐れられる世界一の大富豪。彼は明里を力強く抱き寄せ、彼女に固執する元夫を冷徹な眼差しで見下ろす。「勘違いするな。今、明里は俺の女だ」と。一方、離婚後に初めて彼女の価値に気づいた元夫は、狂おしいほどの後悔に苛まれていた。必死に復縁を乞う元夫だったが、明里の隣にはすでに、圧倒的な権力を持つ新たな伴侶がいた。裏切りから始まった第二の人生で、彼女は真の愛と至高の幸福を掴み取っていく。
偽りの結婚式:私の冷たい微笑み の小説カバー
9.2
待ち望んだ晴れの日、結婚式場は祝福ではなく冷酷な悪意に包まれていた。姿を消していた婚約者の新九郎がようやく現れたかと思えば、彼は私の従兄や幼馴染と手を組み、純白の婚礼衣装を纏った私に真っ赤な液体を浴びせかけるという暴挙に出たのだ。「お前との結婚などあり得ない」と吐き捨て、この式は別の女性を歓待するための残酷な見世物に過ぎないと告げる。かつて信頼を寄せていた最愛の人々による卑劣な裏切りと、参列者から向けられる好奇の視線。しかし、絶望の淵に立たされたはずの私は、静かに微笑みを浮かべていた。実は、彼らが密かに進めていたこの惨憺たる計画の全容を、私は最初から把握していたのだ。凍てつくような心で、私は集まった一同へ向けて毅然と宣言する。「素晴らしいリハーサルをありがとうございました。まもなく、私の本当の結婚相手がこの場所に到着します」と。偽りの誓いの裏で進行していた真実。復讐の幕が上がると同時に、私の真の物語がここから動き出す。
替え玉の花嫁 の小説カバー
8.3
祖母の莫大な治療費を工面するため、オータムは切羽詰まった状況に追い込まれていた。そんな時、姉のイヴォンヌが自身の結婚式を目前にして行方をくらませてしまう。残されたオータムは、治療費の支払いと引き換えに、姉の身代わりとして花嫁の座に就くことを決意した。結婚相手は、莫大な富と権力を掌中に収める若き実業家、チャールズ。彼は端正な容姿と地位を武器に、常に派手な女性関係が噂される奔放な男だった。次々と恋人を替える彼の不実な振る舞いは世間の知るところであり、愛のない政略結婚に未来を感じる者は誰もいない。オータム自身の願いも、契約期間である一年を無事に終え、彼との離婚を成立させることだけだった。互いに惹かれ合うはずがないと確信していた二人だったが、偽りの夫婦生活を続けるうちに、運命の歯車は予想外の方向へと動き始める。金と利害で結ばれた仮初めの関係は、冷徹なチャールズの心と、秘密を抱えたオータムの境遇を少しずつ変えていく。果たして、一年後の二人に待っているのは、予定通りの別れか、それとも予期せぬ愛の結末か。
崖の上の薔薇は、冷たく咲く の小説カバー
8.0
神城家の令嬢・イヴは、正体を隠してマフィアの若頭・沙羅場ルカと5年間愛を育んできた。しかし、その献身は最悪の形で裏切られる。誘拐され命の危機に瀕した彼女が、絶望の中で何度も助けを求めてかけた電話に、ルカが応じることはなかった。瀕死の状態で崖から突き落とされた彼女を救ったのは、実家の首領だった。九死に一生を得た夜、ルカが自分の異母妹と密会していた事実を知り、イヴの心は完全に凍りつく。復讐と決別の意志を固めた彼女は、父に対し、冷酷非道と恐れられる最強のマフィア「綾小路」家の後継者との政略結婚を承諾する。ただし、ある一つの条件と引き換えに。プロポーズを受けたその日、イヴがルカに突きつけたのは、永遠の別れという名の残酷で慈悲深い「自由」だった。かつての恋心を捨て去り、冷徹な薔薇として返り咲いた彼女の、新たな運命が幕を開ける。裏切りへの対価を払わせるため、彼女は愛した男を捨て、修羅の道へと足を踏み入れる。
章
今すぐ読む
共有