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夜を狩るもの 終末のディストピア[seven deadly sins] の小説カバー

夜を狩るもの 終末のディストピア[seven deadly sins]

雪に閉ざされた街、ホワイト・シティ。その象徴ともいえるノブレス・オブリージュ美術館に飾られた一枚の絵画から、ある青年が産み落とされた。現世に降り立った彼は、表向きは平凡な大学生としての日々を過ごしているが、その実体は闇夜に紛れて魂を刈り取る「死神」という宿命を背負っていた。自らの存在意義や世界の真実を深く追求することもなく、ただ盲目的に生を繋いでいた彼だったが、過酷な運命の中で一人の女性と巡り会う。彼女との出会いは、感情を持たぬ死神の心に大きな変化をもたらし、かけがえのない恋人として彼の孤独な人生を照らし始める。しかし、その先には凄惨な暴力や残酷な現実が待ち受けていた。終末の気配が漂うディストピアを舞台に、愛と死の狭間で揺れ動く青年の戦いと葛藤を描いたダークファンタジー。過激な描写を交えながら、過酷な世界で愛を貫こうとする者たちの物語が今、幕を開ける。青年は大切な人を守り抜き、死神としての呪縛から解き放たれることができるのか。
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章 2

シンシンと雪が降り積もるここホワイト・シティ。この街に来た観光客は街全体がいつも雪景色しか見れないと皆珍しがっていた。

 モートはこの街が好きだった。

 一年中。雪が降り積もり。どこもかしこも銀世界の街。街の人々は建造物や枯れた木々に堆積する雪にすら誇りを持って暮らしているのだろう。それくらいに人々は雪を大切にし自慢をしていた。

 モートがよく聞く街中の会話にも、銀世界の中の雪を被った建造物などがでる。

「昨日、テレビで観たんだよ。あそこのイーストタウンにある。ここから数ブロック先のトニーの家で、父親が雪かきの時に屋根から滑り落ちたってさ。女房も心配してたんだが……」

「それで、トニーの父親は?」

「大丈夫だってさ。幸い足を捻挫しただけだって。女房も俺も一安心さ」

 建物の傍で仕事をしている二人の配管工の会話をモートは歩きながら聞いていた。

 どこまでも続く雪景色を白い息を吐いてモートは歩いていた。敷き詰められた雪と霜の絨毯の歩道を急いだ。今日は高校程度だが、少しは知識のあるモートにとっても決して楽ではない大学の試験だった。

「あら、モート。昨日はありがとね。お蔭さんで主人の飼ってたボギが戻って来たわ」

 パン屋の女がモートにお礼を言った。

 ボギはペットの豚の名だ。 

 モートはニッコリと微笑んでから、早歩きでその場から去って行った。 

 去った理由は、モートには感情というものがないからだ。人に感謝をされても何も感じないのだ。そんなモートがボギを助けた経緯は、昨日の大学からの帰り道で、偶然に道に迷って凍死寸前だったボギを見つけ、そのまま震えるボギを抱えて、急いでパン屋へ向かったのだ。ただの街の人々やヘレンによって教えられた常識からくるものだった。

 道中、積雪や霜に幾度も転びそうになったが、聖パッセンジャーピジョン(絶滅した渡り鳥)大学へと向かう。

 ここから西へ行くと、ウエストタウン、北はクリフタウン(崖)。東はイーストタウン。南はヒルズタウン(丘)という地名が人々から付けられていた。ヒルズタウンは高級住宅街やオートクチュール(高級洋品店)や、グランド・クレセント・ホテルという格調高いホテルなどがある。

 モートの通う大学は、寝泊り場であるノブレス・オブリージュ美術館から北にあるので、ホワイト・シティの中央に位置するセントラル駅を素早く通り越して、クリフタウンへと足を向けた。

 モートには、大学での友達はいないが、よく音楽室で出会うアリスとシンクレアという女性とシンクレアの姉弟は時々話しかけてくる仲だった。

 音楽室では、モートは楽器によく触れていた。

 感情がないためか、何故か音や歌にとりわけ興味があったのだ。

 クリフタウンは、雪を目深に被った標高5千メートルの雪の山。通称ホワイト・グレートがホワイト・シティを見下ろしている。過去に雪崩が起きたことはない。だが、おおよそ1500年前には大きな雪崩が起きたという記録が街の図書館にあった。

 モートは一年前にホワイト・グレートに登ったことがある。そこで、一人の登山者を凍死寸前から助けたことがあった。クリフタウンの家屋は皆、ロマネスクやゴシックなどの教会のような尖った屋根をしている。